「…んっ」

目覚まし時計に起こされることもなく、自然に目が覚めた。伸びをしようとして、それが叶わないことを知る。寝ぼけた頭で回りを見渡そうとするも、それも叶わない。目の前に広がっているのは、見覚えのある彼の胸元。さらに、彼の腕で抱きしめられていることを知る。身動きがとれないわけである。

「サスケくん?」

試しに呼んでみるも、彼の寝顔は相変わらず気持ちよさそうな顔をしている。いつも眉間にある皺は今はなくて、どこか幼い印象を受ける。きめ細かい肌は女の私より綺麗なのではないかと少し嫉妬する。その頬を指先で軽くつついてみるも、起きる気配は全くない。

「…へへ」

彼が起きないことをいいことに、その頬を堪能する。こんなに安心しきった顔を見れるのは私だけだと思うと、どうしようもなく嬉しい気分になる。

「…ん」

少しつつきすぎたか。くすぐったかったのか、彼が小さく唸る。咄嗟につつくのをやめると、また気持ちよさそうに寝息をたてた。

「サースケくん」

私の声が届いたのか、抱きしめられる力が少し強くなった。それが嬉しくて、私も抱きしめ返す。ついでにその胸元に頬を寄せる。大好きなその匂いに思わず頬が緩む。もう少しこうしていたいが、時計を見ればそろそろ起きて、朝食の準備をしなければいけない。そっと抱きしめてくれている腕を解こうとするもびくともしない。

「…さくら?」

何度かじたばたとしているうちに彼を起こしてしまったらしい。少し掠れた声で己の名前を呼ばれた。寝ぼけた眼でこちらを見ている。

「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「…ん」
「私、朝ごはん作ってくるから。離して?」
「んーん…」

私の提案を拒否するとみられる返事と同時に、サスケくんはより私を抱き込んだ。困惑する私を余所に、サスケくんは再び寝ようとしている。

「サスケくん!」
「…なんだよ」
「もう起きなきゃ。ね?」
「……」
「一緒に朝ごはん、食べよ?」
「…わかった」

ようやく起き上がった彼は、まだ完全に起きてはいないようでこくりこくりと船を漕いでいる。その様子すら愛しくて、眺めていると彼がこちらを見た。

「サスケくん?」
「…おはよ、サクラ」
「おはよ、サスケくん」

二人してだらしなく笑いながら朝の挨拶を交わす。そのまま再び寝そうになる彼の手を引いて、寝室を後にした。



今日のはじまり
(どんな一日になるかな)



20120902



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